54 前川正導
長い間本校で美術を指導された前川正導先生の遺作展が、荒尾文化センターであった。「一粒萬倍」(一粒の種子はやがって万倍もの実りとなる、の意)を生涯の作品テーマとされたが、特大の立体造形「インスタレーション」に営々と繋がる生命エネルギーを感じ圧倒された。深海から伸びる海藻のようにも、また映画「アバター」に出てきた惑星「パンドラ」の密林のようにも見えた。奥様から先生の生前の様子を聞いた。「毎日荒尾干潟に行ってガラスの欠片を拾ってくるんです。たまに『今日は赤いガラスを拾ったよ』って、まるで宝石でも見つけたように喜ぶんです。」芸術家は、子供の純粋な心を生涯失わない。